第20話  鶴岡の釣り団体の結成    平成25年09月18日  

 庄内の冬は北西から吹く季節風によって、とても寒い。苦竹の穂先はその冷たい季節風よって三年子以上の竹竿のウラ(穂先)の殆どは枯れてしまっている事が多い。その為、竿竹の採取する竹藪を選ぶ事も重要になる。比較的大きな籔では、その南側に面した比較的季節風が当たらない場所に生えたものの中から選ぶ事が出来る。しかし必ずしもそんな条件の良い場所に当たる事はまず滅多にあるものではない。小さな部落の中に風を遮るために家の周囲に苦竹を植えている家が少なからずある。そんな場所の風の当たらない南側に生えている竹の中からも探す事が出来る。それでも冬は結構寒いので穂先が枯れているものが多いものだ。
 ウラ竹候補は出来るだけ数多く用意する事が要求される。竿に合わせるには最低でも2300本のウラ竹は必要だ。明治、大正の名竿師の上林義勝などは先輩の竿師が亡くなった時大八車に一杯のウラ竹を貰って来たそうだ。それに自分の採って来た物を合わせれば何万本あったか分からない。それでも亡くなるまでウラが探せなかった竿があったと云う話があるのである。後日談としてその竿は後に上林の竿だから勿体ないと昭和の名竿師山内善作によって完成されたと云う話があった。今度はその山内善作もウラのない竿が残っていたそうである。その位ウラ継は、合わせるのが難しく神経を使うものなのである。
ウラ竹は竿の竹に出来るだけぴったりと合わせる事が重要だ。例えば竹の節と節の長さ所謂節間、太さ、色合い、堅さなどすべてがぴったりと合うものがベストとされる。ウラ竹と元竹の二本並べ斜め切りをする。そして竹に堅い竹串を差し入れる。漆に小麦粉を混ぜたものを塗り、この上に真綿を巻き柔らかくした麻糸巻いて、生漆にトノコを混ぜて塗りつける。これを三度ほど繰り返す。最近では継いだ部分の上にゼリー状の接着剤を塗りその上に薄く真綿を巻きつけその上に又漆を塗り固めるようにしている。
 中通竿を作る場合では、竿の中に道糸を通さねばならず竹串は使えない。そこで竹と竹の切り口を少し大きく取りピッタリと合わせ、接着剤でくっつけその上に少し厚めにしっかりと真綿を巻きつける。継ぐ部分が少し太い所にある場合には、折れたカーボンのチューブラを短く切りそれを竹の中に差し入れて継ぐ事もある。すると道糸がスムースに竹の中を通す事が出来、竹に芯が入ることによってより丈夫になるからである。